• 政策研究・人材育成のプラットフォーム

シンガポールの「普通の家庭」も巻き込まれる

北緯一度から見る 親たちと教育のこれから
中野 円佳 : 東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)、ジャーナリスト

シンガポールに住んで5年目になるが、東京に比べて非常に子育てがしやすい。東京の街中をベビーカーを押して歩いているときに舌打ちをされるといった、子連れが肩身の狭い思いをすることはほとんどない。電車に乗れば、幼い子ども連れには競うように何人もが席を譲ってくれることもある。

しかし、これはあくまでも、余裕のなさすぎる東京との対比で、また、いつか母国に戻る選択肢のある外国人の感覚かもしれない。この連載でここまで見てきたように、ここで産まれ、ここで生きていくことが基本である人たちにとって、シンガポールの教育システムは、ときに過酷だ。そして、選択肢は多いけれど、選ぶには逐一お金がかかる。

あるシンガポール人を配偶者に持つ日本人女性は「私たちは引っ越せないので、今この環境で子育てをしているけど、あえてシンガポールで教育を受けさせたいとは思わない」とつぶやく。

実際に、住んでいる人たちにとって必ずしも子育てがしやすいとは言いがたいことをうかがわせるのが、シンガポールの極端に低い出生率だ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA