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戦術的失敗で戦略目的を見失ってはならない

最近の気に掛かる記事: 東洋経済オンライン API地経学ブリーフィング

米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

すし詰めの避難民を乗せたアメリカ軍C-17輸送機が追いすがる市民を振り落としながら離陸する映像は、世界中に大きな衝撃を与えた。

さらに、ともに戦った英仏独豪等の同盟国やアフガン国民の人権への配慮に欠けたバイデン大統領の頑なな言動は、アメリカの国益第一・単独主義を強く印象付け、撤退の正統な理由である「対中ピボット」への疑念さえ生じさせている。中国は、これを20年に及ぶアメリカの「民主化実験」の失敗であり、アメリカの信用失墜と覇権凋落の証しとして喧伝している。

環球時報は、アメリカが一方的にアフガンを見捨てたのは「台湾の将来の運命の前兆を示しているのではないか」(8月17日社説)、「アメリカは必ず最終的に台湾を見捨てる」(18日同)と書き、台湾にも揺さぶりをかけている。アフガン情勢は東アジアにも大きく影響し、日本の安全保障に直結するアメリカのインド太平洋リバランスの成否を左右する問題である。

バイデン外交も「アメリカ・ファースト(アメリカの国益優先)」が本質であることが明らかとなった今、同盟国への防衛コミットメントは揺るがないという大統領の言説は、今後の行動によって裏付けられる必要がある。

日本は、欧米と一線を画したアフガンの民主化支援に取り組んできた。その実績を踏まえ、タリバンの恐怖政治の復活に深刻な身の危険を感じているアフガン市民や在留外国人の安全確保、テロの温床化防止や女性の人権保護に、国際社会と共同した取り組みを続ける必要がある。そして、威信を傷つけられ名実ともに疲弊したアメリカを後押しし、アメリカのインド太平洋へのリバランスを確実にするため、主導的な行動が強く求められる。

日本は、在外邦人の安全確保のみならず、台湾海峡や朝鮮半島の危機、尖閣諸島防衛等のより困難な事態を想定し、政府全体の危機対処能力を平素から高めておかねばならない。自国と自国民を守る意思と能力を持つことは、アメリカのコミットメントを確実にする必要条件でもあるのだ。


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