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最近の気に掛かる記事: ニューズウイーク日本版 舞田敏彦

<「モラトリアム」期間である学生時代に、留学や外国でのボランティアなどで学び(体験)の機会を持つことは重要だが>

休学とは、学校に在籍する生徒や学生が、一定期間授業を受けない状態にあることを言う。義務教育諸学校の学齢児童・生徒は、法律上休学は認められない。長期間休まなければならない事由がある場合は、就学義務の猶予ないしは免除の対象となる(学校教育法18条)。だが高校生や大学生はこの限りでなく、大学での休学は「教授会の議を経て、学長が定める」とされている(同法施行規則144条)。

2020年5月時点で見ると、休学している大学生は2万8486人で、大学生全体のおよそ1.0%となる(文科省『学校基本調査』)。これだけでは何とも言えないが、タテの時系列比較、ヨコの国際比較をすると、日本の大学生、もっと広くは青年期の特徴(課題)が見えてくる。

まずは時系列比較で、<図1>は大学生の休学者数の推移をたどったものだ。1970年から2020年までの半世紀のカーブを描いている。

大学の休学者は1980年代半ばから上昇し、東日本大震災が起きた2011年には3万人を超えた。その後、数年はフラットで、2019年に過去最多となり翌年にはまた減った。2020年は感染症の拡大で、仲間と会えない孤独や経済苦が広がったことから休学も増えたかと思いきや、現実には減っている。これは、この年から始まった高等教育の無償化政策の効果だろう。

長期的に見て、大学生の休学は増加の傾向だ(学生数で割った出現率でみても同じ)。これをもって、学業不適応やアパシー(意欲の低下)に陥る学生が増えている、小・中学校の不登校と同じ意味の指標と読むべきだ、という声がある。大学進学率は年々上昇し、今や50%(同世代の半数)を越えていることから、そういう見方も当たっているかもしれない。

だが国際比較のデータをみると、そればかりを強調するのはためらわれる。15~24歳の学生のうち、今通っている学校を休学している者は何%かを国別に出すと<図2>のようになる。

感染症の影響が出る前の比較だが、スウェーデンでは高校生年代でも1割弱、韓国・アメリカ・イギリスの20代前半では2割にもなる。徴兵制などの理由もあるだろうが、日本とはケタ違いだ。

休学というとアパシーや経済苦といった負のイメージが付きまとうが、そうでないものもある。留学をするとか自己を見つめ直すとか、積極的な意味合いのものはいくらでも考えられる。海外でのボランティアもそうで、世界がぐっと縮まった今、世界規模の課題の解決に寄与したいと思う学生も多いはずだ。こうした学び(体験)ができるよう、大学に働きかけ、休学中の学費の減免を勝ち取った学生もいる。

青年期はアイデンティティーを確立すべく、様々な試行錯誤が許された「モラトリアム」の時期だ(発達心理学者のエリク・エリクソン)。「寄り道」を認めてもいい。<図2>のグラフから、日本の年齢主義の弊害も透けて見える。応募してきた学生の履歴書を見て、「なぜ22歳を過ぎているのだ?」などととがめるのは時代遅れだ。


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