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<CO2削減で世界のリーダーを目指す習のノルマに応えるために強引な計画停電を実施。生産力の低下で世界経済に影響が及ぶ懸念も>

このところ中国各地で停電が頻発している。特に製造業が盛んな地域では、当局の指示により最長で1週間も電力供給がストップし、工場が軒並み操業停止に陥る事態になっている。

背景には、中央政府が掲げる二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標を達成するため、地方当局が躍起になっているという事情がありそうだ。中国の製造業が生産停止に陥れば、スマートフォンなどの製品が世界的に品薄になり、クリスマス商戦を控えたこの時期、コロナ禍からの復活を目指す世界経済全体に影響が及びかねない。

中国では電力消費の伸び率が例年の2倍近くに上り、政府は節電の旗を振り始めた。中国共産党が気候変動対策の一環としてGDP単位当たりのエネルギー消費量である「エネルギー強度」の削減を重視している。

都市部でも政府の節電政策による停電が発生し、SNSでは「何とかしてくれ!」という声が飛び交っている。

以下はAP通信が伝えた詳細。

スマホの明かりで食事をする庶民

中国各地で電力供給がストップするなか、9月29日東北部の住民はスマートフォンの明かりを頼りに朝食をとり、商店主は自家発電機をフル稼働させて営業を行った。

中国メディアは、石炭価格の高騰と電力需要の急増のダブルパンチのせいで電力不足になっていると報道しているが、エコノミストによれば本当の理由は政治的なものだ。中央政府が掲げるCO2削減目標を達成するため、地方当局は大幅な節電を迫られている。

東北部の最大都市・瀋陽で飲食店を経営するLi Yufengは午前7時半に停電するとの通告を受け、電動自転車の電池を使って湯を沸かし、麺をゆでる準備を整えた。その日はいつもより早めに6時から仕込みにかかり、チキンやソースなどを用意した。

「多少は売上に響くが、大したことはない」と、Liは話す。薄暗い店内で、客はスマフォの明かりで食事していた。

ここに来て急に停電が頻発するのはなぜか。実は10月12、13日に南部の雲南省昆明で、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)がオンライン形式で開催されることになっている。この会議のホストを務めるのは習近平(シー・チンピン)国家主席。自国が排出削減と省エネの目標を達成していなければ、習の面子が立たない。

停電は「主にエネルギー消費の抑制のための措置」だと、英調査会社IHSマークイットのラーラ・ドンはAP通信の取材にメールで応えた。

「脱炭素で世界のリーダーを目指す中国の野望の一環と見ていい」

中国当局は今年8月、コロナ禍の収束による生産活動の再開に伴い、20地域でエネルギー消費と大気汚染レベルが削減目標を上回る状況になっていると警告。習政権は経済のクリーン化と省エネ化をうたう野心的な計画を掲げており、削減目標の未達成は地方当局者の首が飛ぶほどの重大ミスとなる。

今回の停電は「これまでの電力不足以上に生産に深刻な影響を与えかねない」と、バンク・オブ・アメリカの報告書は指摘している。一部地域では「政府がエネルギー消費目標を緩和しても、すぐには電力不足は解消しないだろう」。

中国は産業部門のCO2排出量が世界最大級で、産業の省エネレベルを示すエネルギー強度が先進国より高い。ただ人口が多いため、1人当たりのエネルギー消費はぐっと少ない。

来年2月に北京と隣接する張家口で冬季五輪が開催されることも電力消費の抑制と無関係ではなさそうだ。習政権としては、五輪開催中、会場上空に広がるクリーンな青空を世界にアピールしたいだろう。

地方当局は帳尻合わせに必死

上海の北西に位置する江蘇省は工業が盛んだ。そのためもあって一部の都市は既に今年の電力消費割当の90%を使ってしまったと、省の当局者は国営メディアに明かした。年末までに何とか帳尻を合わせるのは、都市当局の務めだと、省当局者は突き放している。

中国最大の製造業の中心地である広東省も電力不足に陥っているが、その原因は中央政府がエネルギー消費の上限を設けたことだけでなく、省内の電力供給に大きな割合を占める水力発電が水不足にたたられていることだと、省当局は説明している。

東北部の遼寧省(省都は瀋陽)では、9月26日に当局が今年初めから8月までに電力需要が記録的に増加したと発表。風力発電などの発電量の低下が需要の急増に追い打ちをかけ、電力不足を招いていると、当局は述べている。

隣接する吉林省でも停電が頻発しているが、こちらは石炭不足が原因だとして、当局は9月27日、省のトップが石炭の緊急調達のため近くの内モンゴル自治区の炭鉱に交渉に行くと発表した。

停電は突然に起きることが多いが、瀋陽などの都市では、住民に事前に通告される場合もある。ただし、理由は説明されない。

飲食店経営のLiはスマホで受け取った停電の知らせを見せてくれた。この地区では午前7時半から午後4時半まで停電すると書いてあるだけだった。

商店主のYang Changは大量の食肉を保管した冷凍庫の温度が上がらないよう、店の外に設置した発電機をフル稼働させた。

「飲食店は水がないとダメだが、うちはこいつがあれば、商売ができる」と、Yangは発電機を誇らしげに見せた。停電の理由は分からないが、理由など興味はないし、「仕方がない」と言う。

「私は1990年代生まれだが、子供の頃は停電には慣れっこだった。確かに今はちょっと不便だが、大丈夫、政府が何とかしてくれるさ」


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