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田原総一朗が振り返る国民と自民党の関係

最近の気に掛かる記事:東洋経済オンライン 田原 総一朗 : ジャーナリスト

第49回衆議院議員総選挙が近づいてきた。「日本では政府がいくら批判されても、自民党に代わって、政権を奪う力のある党がない。そう思うから自民党議員たちにも緊張感が生まれない。国を動かす議員たちに緊張感なくして、国民には緊張感を持てというのか──」なぜ日本人は自民党だけを選んできたのか。ジャーナリスト・田原総一朗氏の新刊『自民党政権はいつまで続くのか』より、一部を抜粋・再構成してお届けする。

自分の身体に合わせた洋服をつくるのは上手ではない

国民の多くは、なぜ自民党政権をこれほど長期間支持し続けているのだろうか。その要因について僕は、次の2つだと捉えている。

1つは、安全保障である。

実は自衛隊が創設されたのは、1954年で、自民党が発足したのが、1955年である。

憲法では9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と書いてあるが、自衛隊は戦力も交戦権を有していて、明らかに憲法と矛盾している。

そこで、自民党の初代首相、鳩山一郎は、「自主憲法」をつくるべきだと主張し、実現はできなかったが、岸信介首相も憲法改正を強く訴えた。

ところが、それ以後の池田勇人、佐藤栄作の両首相とも、憲法改正を全く考えていないようだった。そこで1971年の秋に、自民党きっての頭脳派で、ニューライトの旗手的存在であった宮澤喜一氏に、強引に頼み込んで会ってもらった。

池田・佐藤両首相は、憲法改正を考えていないようだが、言わば矛盾を封じ込めて、国民をごまかしているのではないか。なぜ池田首相以後、姿勢を豹変させたのか。そのことを宮澤氏に問いたかったのである。

すると宮澤氏は、いささかのためらいもなく、やわらかな口調で話しはじめた。「私はね、日本人というのは、どうも自分の身体に合わせて洋服をつくるのは上手ではない。下手だと思うのですよ」

それはどういうことなのか。

僕が問うと、宮澤氏は、満州事変、日中戦争、太平洋戦争などの話をした。

自分の身体に合わせた洋服をつくろうとすると、軍が突起して政治を抑え込んでしまう。

五・一五事件で犬養首相が軍によって殺され、二・二六事件では、政府幹部が軍によって殺された。いわばクーデターである。

こうして、軍が主導して、勝てるはずのない太平洋戦争に突入して惨憺たる敗北を招いてしまった。

自分の身体に合わせた洋服をつくるのは上手ではない
国民の多くは、なぜ自民党政権をこれほど長期間支持し続けているのだろうか。その要因について僕は、次の2つだと捉えている。

1つは、安全保障である。

実は自衛隊が創設されたのは、1954年で、自民党が発足したのが、1955年である。

憲法では9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と書いてあるが、自衛隊は戦力も交戦権を有していて、明らかに憲法と矛盾している。

そこで、自民党の初代首相、鳩山一郎は、「自主憲法」をつくるべきだと主張し、実現はできなかったが、岸信介首相も憲法改正を強く訴えた。

ところが、それ以後の池田勇人、佐藤栄作の両首相とも、憲法改正を全く考えていないようだった。そこで1971年の秋に、自民党きっての頭脳派で、ニューライトの旗手的存在であった宮澤喜一氏に、強引に頼み込んで会ってもらった。

池田・佐藤両首相は、憲法改正を考えていないようだが、言わば矛盾を封じ込めて、国民をごまかしているのではないか。なぜ池田首相以後、姿勢を豹変させたのか。そのことを宮澤氏に問いたかったのである。

すると宮澤氏は、いささかのためらいもなく、やわらかな口調で話しはじめた。「私はね、日本人というのは、どうも自分の身体に合わせて洋服をつくるのは上手ではない。下手だと思うのですよ」

それはどういうことなのか。

僕が問うと、宮澤氏は、満州事変、日中戦争、太平洋戦争などの話をした。

自分の身体に合わせた洋服をつくろうとすると、軍が突起して政治を抑え込んでしまう。

五・一五事件で犬養首相が軍によって殺され、二・二六事件では、政府幹部が軍によって殺された。いわばクーデターである。

こうして、軍が主導して、勝てるはずのない太平洋戦争に突入して惨憺たる敗北を招いてしまった。

そこで、宮澤氏は、「押しつけられた洋服に身体を合わせるほうが安全だ」と考えたのだという。宮澤氏だけでなく、池田・佐藤両首相をはじめ、戦争を体験した自民党の幹部たちは、このように考えたようだ。

だから、吉田内閣の時代に、池田・宮澤の両氏が2度アメリカを訪問し、その時、「あのような憲法を押しつけられたら、日本はまともな軍隊を持てない。だから、日本の安全保障はアメリカが責任を持ってほしい」と要請したのだという。そして、アメリカは、その当時もその後も、日本が強い国になるのは困るから、その要請を快諾したということだ。

そのために、日本は戦争に巻き込まれることがなく、70年以上、平和を維持できた。そして野党もその点では異論はなく、だから自民党政権が長く続いたのである。

だが近年では、アメリカの経済が悪化して、アメリカが「パックス・アメリカーナ」を維持するのが難しくなり、日本の安全保障を、改めて考えざるを得なくなってきている。

もう1つの理由が、経済である。

日本は、惨憺たる敗北を招いた後、自民党政権の懸命な努力によって、池田首相時代から奇跡と称される高度経済成長を実現した。

もっとも、鉄道や道路網が太平洋側を偏重して建設され、しかも海路による輸出入は太平洋側が便利なために、企業も工場も太平洋側に林立して、太平洋側は過密、日本海側は過疎となり、太平洋側は地価が高騰し、そのうえ、深刻な公害に襲われた。

そのために、太平洋側の自治体では、選挙で野党が強くなり、いわゆる革新知事や革新市長が次々と登場することになった。

田中角栄が打ち出した「都市政策大綱」
そこで、当時幹事長であった田中角栄が、1967年に『中央公論』に、「自民党の反省」という論文を発表し、1968年に「都市政策大綱」なる構想を打ち出した。

日本列島全体を改造して、高能率で均衡のとれた、ひとつの広域都市圏に発展させるというのである。

そして田中は、「一日生活圏、一日経済圏、一日交通圏」という言葉を提唱した。この3つの条例が達成されれば、第2次、第3次産業を全国に配置することができる。過疎化に悩む、日本海側や内陸地域にも産業を配置することができて、過密・過疎の問題が解決することになる、と考えたのである。

そのために、北海道から九州まで新幹線を通し、全国に高速道路網を張り巡らせ、第2、第3の国際空港と、各地に地方空港を誘致し、4つの島をトンネルか橋で結ぶという方針を打ち出した。

この「大綱」は、自民党に常に批判的だった朝日新聞ですら、高く評価したのである。

その後、田中が首相になる直前に発表した『日本列島改造論』は、問題点もあったが、田中の構想が、過密・過疎を解消し、日本全体を発展させたことは間違いない。

第4四次中東戦争が起きなければ、田中内閣は長期間続いたはずである。

そして1980年代に入って、日本は凄まじい輸出力を有することになり、アメリカに集中豪雨的に輸出し始めた。アメリカは、深刻な貿易赤字となった。

そこで、レーガン大統領は、日本からの輸出を止め、逆に日本への輸出を増大させるために、日本をまるで敵国であるかのように無理難題を次々と押しつけてきた。

たとえば、竹下登蔵相(当時)を強引にニューヨークに呼び出し、「円高にせよ」と要求した。そのために、1ドル=238円だったのが、153円となり、円高不況となった。さらに、次々と輸出規制を要求し、「前川レポート」で無理矢理に内需拡大をさせられて、バブル経済となり、それが崩壊した。

僕は、中曽根首相に、「なぜアメリカのこんな無理難題を、日本は受け入れなければならないのか」と問うと、「安全保障をアメリカに委ねているからね」と苦い表情で話した。
こうした不況の中、1990年代にアメリカでIT革命が起きた。インターネットが開発されたのである。

日本の産業界はアメリカの3周遅れ
だが、日本は、いわゆる日本的経営の構造的な問題で、IT革命に参入できず、人工知能の権威である東大の松尾豊教授によると、日本の産業界は、アメリカの3周遅れになってしまったということである。

そのためであろうか。

1989年には、時価総額ランキングで、世界のトップ50社の中に日本企業が32社入っていたのだが、現在残っているのはトヨタ自動車1社だけである。

また、当時は、世界における日本のGDPのウエイトは15.3%であったが、現在は6%にまで落ち込んでいる。さらに、技能オリンピックで、1999年から2015年まで日本は金メダルの獲得数で、だいたい3位以内に入っていたのだが、2017年に9位に沈み、その後メダル数はさらに後退している。

日本の経済産業はどうすれば復活できるのか。2020年のはじめに僕は、日本共産党の志位和夫委員長と立憲民主党の枝野幸男代表に、今こそ野党の政権奪取の絶好のチャンスだ、アベノミクス批判をしている時代は終わりで、どうすれば日本の経済が復活できるのか、そのビジョンを示すべきだと言ったら、2人とも大きくうなずいていた。

そこへ深刻な新型コロナウイルスによるパンデミックが起こり、菅内閣は不手際を連発した。

その後、菅首相は総裁選不出馬を表明し、そして9月29日、第27代目となる自民党総裁に岸田文雄氏が選出された。

新たな政治のあり方が求められている。今こそ、野党の政権奪取に期待したい。


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