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最近の気に掛かる記事:ニューズウイーク日本版 flier編集部

<ギュスターヴ・ル・ボン『群集心理』など歴史に残る3冊の名著が教える、他人に流される心理と、大衆の中で自分という「個」を保つために必要なもの>

「自分は流行りものなんかになびかない」と思っていても、つい売れている商品を手に取ってしまう。「自分の意見をしっかりもちなさい」と言われても、強い言葉を頼りがち。物や情報の溢れている現代のほうがその悩みは深いように思われていますが、100年以上前の人たちも、「流される普通の人びと」の行動について悩んでいました。

「出る杭は打たれる」日本では、「郷に入っては郷に従」いつつ、波風立てないように”うまくやる”のが処世術と思われているところがありました。

そうすることが結果的に、和を乱さず、効率的な集団運営をしていく力になってきたとも言えます。

ただ、それだけで「自分自身の人生」が本当に豊かになっていくかは疑問です。

「流される」一方ではない生き方をつかむには、まず「なぜ流されるのか」への理解を深めることが先決かもしれません。

「知」の名著から社会や人生のヒントを探り、近寄りがたい古典的ベストセラーを、いまのあなたに活かしてみませんか?(この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です)。

知らぬ間に「流されて」います

『群衆心理』
 著者:ギュスターヴ・ル・ボン
 翻訳:櫻井成夫
 出版社:講談社
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ちょっと自分の行動を思い返してみましょう。
・オリンピックなどの国際的なスポーツ大会が開催された時、熱狂して観戦している。
・話題になっていて、友だちの多くが観ている映画やドラマは、自分も観るようにしている。
・知らないお店に行くときには、食べログなどのサイトで評価が高いかどうかを調べる。
・SNSでたくさんの人がシェアしている意見は、きっと正しいのだろうと感じる。

これらについて、一度も経験したことがない人はあまりいないのではないでしょうか?

ちょっとしたきっかけで、さまざまなバックグラウンドをもつ多くの人たちが、同じ方向を向いてしまう。ギュスターヴ・ル・ボンの『群衆心理』は、そうした集団精神のあり方を1世紀以上も前に明らかにした本です。スマホもインターネットもない時代に、いまのSNSの雰囲気を先取りしているかのような内容。なんとあのヒトラーも、そのル・ボンの論理を「悪用」して、人心を掌握したと言われています。

影響力のある人物や(ネットを含む)メディアは、「断言」「反復」「感染」という方法を用いる、といいます。たとえ論拠に乏しくても、強い断言をくり返されると、見識のある人々でさえ強く影響を受けてしまうのです。思想の方向性にかかわらず、成功した人間や英雄的な行動をとった人などの威厳は、特に強い「感染力」をもちます。

「集団的精神をもった個人は、その知能や個性を失い、無意識的性質に支配される」。そして、そうした「群衆」は容易に「感染」します。「自分はそうならない!」と思っていても避けることは難しいのです。

一旦盛り上がった群衆は、強いうねりを生み出して、さらに多くの人を巻き込んでいきます。「自分は巻き込まれない保証」などどこにもないでしょう。

インターネットなどない時代ですらそうだったのですから、さらに情報の波にさらされやすい現代ではなおさらです。このメカニズムについて、本書で理解を深めておくことは、決して無駄になりません。

「善良な人」が手を染めるとき

『普通の人びと』
 著者:クリストファー・R・ブラウニング
 翻訳:谷喬夫
 出版社:筑摩書房
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巻き込まれ、流されていった先の悲劇、それが第二次世界大戦でした。

戦争というと、政治家と軍人によるドンパチだと思いがちですが、実は一般社会に生きる「普通の人びと」が、積極的にかかわってきました。

『増補 普通の人びと』は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツで、「普通の人びと」がユダヤ人の大量虐殺を担う主体になっていった様が描かれています。

「自分が加担しなくても他の誰かが殺してしまう」「母親がいない状態では子どもは一人で生きていけない」と自分の”罪”を正当化しながら、次第に虐殺という「解決」手段に慣れ、効率的な執行者となっていきました。その「転落」の道筋は、本書を読んでいてとても痛ましく感じるところです。

無実の人を手にかける。それは、現代的な感覚からすると極端な発想のように感じるかもしれません。しかし、実際に命を奪うようなことはなくても、全体的な社会の「空気」のなかで、特定のだれかを「敵対視」するような場面は、いろんなところで見られます。大人の社会でも苛烈な差別はなくなっていませんし、SNSで暴力的な言葉を投げつける人も減りません。

そうした状況に対して、抗いようもなく、手を差し伸べることもできないことはよくあります。落とし穴は、世の中のあらゆるところに空いていて、「善良なあなた」を待ち構えているのです。

これだけ”いじめ”の悲劇が訴えられていながら、いまだにその暴力がなくならない日本社会。あなたは、絶対にそういう感覚にならないと自信をもって言えますか?

「自分で考えること」の難しさ

『大衆の反逆』
 著者:オルテガ・イ・ガセット
 翻訳:神吉敬三
 出版社:筑摩書房
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「自分は人と同じ意見になるのはイヤ」といくら思っていても、結局多くの人は、「まったく人と異なること」には安心できません。スペインの哲学者であるオルテガ・イ・ガセットは『大衆の反逆』のなかで、そうした「大衆像」を克明に描きました。

ある共通の精神状態をもった群衆が、より「全体的な総意」を形成するような状態に膨れてくると、そこに「大衆」が生まれます。この大衆は”平均的な人”の考えを代表していて、「普通はこうする」「普通はこう考える」という空気をつくります。

かれらにとってそれは「社会の常識」なので、その考えと異なるものは排除されてしまう。それがどんなに世の中を良くしようとするものであっても、です。

そうしているうちに、大衆の一人ひとりは「自分自身の考え」に自信がもてない状態になってしまった、というのがオルテガの主張でした。究極的には国家に依存し、国がなんとかしてくれるだろうという感覚、もっと言えば、国がなんとかできないならどうしようもないだろうという諦めにつながっているのではないか、と考えたのです。

何となく、現代の私たちの感覚でも、イメージしやすいですよね。国のレベルまでいかなくても、会社が、上司がこう言っているから、会社がなんとかしてくれるだろう、といった気持ちがどこかにあったりしませんか?

だからこそ、他でもない自分がよりよく生きたいのであれば、「大衆」であることをやめて、個として立ち上がらなくてはならないのです。いままで自分を支えてきた「大衆の空気」を捨てるのですから、それは大変な道のりになるでしょう。しかし、それが自分の運命を切り開くことなのだ、という力強いメッセージを、本書は伝えているのです。

◇ ◇ ◇

リベラルアーツの本は、なじみがないものも多く、近寄りがたいかもしれません。

でも、現代まで生き延びてきた「教養の言葉」たちには、私たちが生きていく意味に直結する、本質的な「人間」が描かれています。

flier編集部

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