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「ライフ・シフト2」が断言「今が幸せ掴む絶好期」

最近の気に掛かる記事:東洋経済オンライン リンダ・グラットン : ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授

シリーズ累計50万部のベストセラー『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の最新版『LIFE SHIFT 2(ライフ・シフト2) 100年時代の行動戦略』がついに刊行された。共著者のリンダ・グラットン氏による日本語版への序文を抜粋、編集。コロナ後の日本人の生き方・働き方への熱いメッセージをお届けする。

予想もしていなかった大激変

この本は、変化する世界で成功するための枠組みを示すことを目的にしている。本書の中で、共著者のアンドリューと私は、世界が急速に変化していることを指摘した。

寿命が長くなり、多くの人がそれにふさわしい新しい働き方を見いだそうとしている。女性の役割が変わり、家族の中で役割分担を話し合うことの重要性が高まってきた。そして、テクノロジーの進歩により、人間がさまざまな仕事から解放されようとしている。

アンドリューが述べているように、こうした人口動態、社会、テクノロジーの面での変化は、今後も私たちの人生を大きく左右し続けるだろう。

しかし、2020年はじめにパンデミックの影響が見えはじめると、私たちは予想も計画もしていなかったような大激変に直面した。

私がこの10年間主宰してきた「働き方の未来コンソーシアム」では、世界のさまざまな企業の人たちが集まり、自社の経験している変化について語り合う場を設けてきた。

『LIFE SHIFT 2(ライフ・シフト2) 100年時代の行動戦略』

●世界中の企業が変革に乗り出す

コンソーシアムに参加している企業の社員や幹部は、新型コロナがもたらした新しい現実に素早く対処した。コンソーシアムには日本企業も参加しているので、私はパンデミックの早い段階でいくつかの日本企業の経験を直接聞く機会があった。

たとえば、2020年春、富士通の人事部門トップである平松浩樹が率いるチームは、東京のオフィスで働く社員のほぼすべてに当たる約6万人を2週間足らずの間に在宅勤務へ移行させた。当時、平松は私にこう語った。

「もう後戻りすることはありません。全員がオフィスに毎日出勤する時代に戻ることはありえない。これまで社員は通勤で毎日2時間を無駄にしていました。その時間を学習や研修、家族との時間に費やせるようになったのです。いま考える必要があるのは、職業人生を生産的で創造的なものにする方法です。リモートワークをうまく機能させるためのさまざまな方法論が求められています」

このように考えたのは、平松だけではなかった。世界中の企業の幹部チームが同様の取り組みに乗り出した。

「新しい長寿時代」の新しい生き方

新型コロナがもたらした経験をきっかけに、日本の働き手と家族は、「新しい長寿時代」を築くための千載一遇のチャンスを迎えている。

新しい人生の「ストーリー(物語)」を紡ぎ、学習と移行を通じて「探索」を行い、人との深い結びつきを生み出して「人間関係」をはぐくむ絶好の機会が訪れているのだ。

「新しい長寿時代」の核を成すのは、マルチステージの人生と幅広い選択肢だ。本書では、2人の日本人のキャラクター、ヒロキとマドカを登場させ、このカップルがどのような道を選びうるかを描き出した。

しかし、アンドリューと私は、まったく幻想をいだいていない。多くの日本企業ではキャリアの道筋に柔軟性が乏しく、本書で描いたような人生の道筋を歩むことは難しい。マドカは、女性として、そして母親として、とりわけ大きな試練に直面すると予想できる。

それでも、新型コロナの影響で多くの人が在宅勤務に移行するのに伴い、生き方と働き方を大きく変えることは不可能でなく、実際に大きな変化が起きるだろうという見方が広がりはじめている。

私が話を聞いた多くの日本人は、オフィス勤務と在宅勤務を併用する「ハイブリッド型」の働き方を採用し、勤務時間の柔軟性を高める可能性について語った。日本の多くの働き手は、こんな疑問をいだきはじめている。「毎日往復2時間かけてオフィスに通勤する必要が本当にあるのか。勤務時間をもっと柔軟に決めるわけにはいかないのか」

これは非常に重要な問いだ。本書で論じているように、人々が自分の人生のストーリーを紡ぐためには、職を辞めたり、職に就いたりしやすい環境が必要だ。そこで、アンドリューと私は企業の課題として、柔軟性を重んじる文化をはぐくむことを求めた。

社員との雇用契約の柔軟性に関して、多くの日本企業は欧米の企業の後塵を拝してきた。しかし、日本でもパンデミックをきっかけに、働き方の柔軟性を高める大きなチャンスが到来したように見える。

パンデミックで登場した新しい学びへの姿勢

パンデミックの影響で働き方を変更せざるをえなくなったのを機に、日本中の人々がスキルを磨こうとした。とくに、デジタル関連のスキルを強化した人が多かった。こうした学びの姿勢をもつことはきわめて重要な意味をもつ。変化が激しい時代に人が可能性を開花させるためには、生涯学習が避けて通れないからだ。

オンライン学習の普及により、生涯にわたって学び続けることが昔より容易になったことも無視できない。

新型コロナの感染拡大が始まってほどなく、オンライン教育機関コーセラのジェフ・マッジョンカルダCEOは、私にこう語っている。「中国、日本、イタリアの受講者数が4倍以上に増えています。大半が公衆衛生関連のコースの受講者です」。

マッジョンカルダは、受講者が互いに助け合っていることに目を見張らされたという。「バーチャル授業にどのように臨んでいるかといったことに関して、情報交換が非常に活発に行われています。新しいことを受け入れるための新しい姿勢が生まれているのです」

このような新しい学びの姿勢は、生涯にわたり学習と探索を行うためのカギを握る可能性がある。アンドリューも指摘しているように、この胸躍る時代に新しい生き方を形づくりたければ、自分の未来に投資しなくてはならない。

感染拡大で気づかされた人間関係の大切さ

今回のパンデミックのなかで、多くの人がそうした投資を行い、デジタルスキルの習得に取り組んだり、オンライン学習を行ったりした。このような学習の習慣を探索の人生の土台にしてほしいと思う。

感染拡大が始まってすぐに私たちが気づかされたのは、それまで考えていた以上に、人との結びつきが人生で重要な意味をもっているということだった。

私の研究によると、パンデミックを経験して私たちが誰とどのように関わるかが変わりはじめている。自宅で働く人が増えて、対面による会話よりバーチャルのやり取りが中心になり、多くの人は人的ネットワークの規模が小さくなったのだ。

バーチャルな働き方がもっと一般的になれば、人々が家族や地域コミュニティーと関わる時間とゆとりがさらに拡大するかもしれない。長時間通勤が不要になったとき、私たちの人付き合いの対象は、職場の同僚から、家族や地域コミュニティーの仲間に変わる。

企業がさまざまな町に「オフィス・ハブ」を開設して、社員が本社オフィスではなく、近所のオフィス・ハブに出勤して働けるようになれば、こうした動きがいっそう後押しされるだろう。

人類の歴史は、驚異的な進歩の歴史だった。そうした進歩を力強く牽引してきたのが人間の発明の能力だ。新型コロナの感染拡大により、その能力の真価が問われる状況が生まれている。

いま私たちは、生き方と働き方に関して100年に一度と言ってもいいくらいの大変革を経験しつつある。これをきっかけにして、変化の激しい世界ですべての人が光り輝ける未来をつくり出そう。


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