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最近の気に掛かる記事:ニューズウイーク日本版 トニー・ラズロ

<舌鋒鋭いグレタ・トゥーンベリは、日本の環境政策に言及しない。日本発の「MOTTAINAI」を知らないのかもしれない。これからは海外に、エネルギーの地産地消を推奨する「EIMY」を広めてはどうか>

いつかノーベル賞を受賞するのではないか。そう言われていた一人の女性環境活動家が、国際会議に招かれては「もう時間がない!」「今すぐ持続可能な開発を」などと訴えていた。その圧倒的な迫力に世界が魅せられた。

グレタ・トゥーンベリのこと? いや、僕の頭にあるのはケニア出身のワンガリ・マータイだ。

実際にノーベル平和賞を2004年に受賞した彼女は、翌2005年に日本語の「もったいない」に感銘を受けた。そしてそれを自分の活動に取り入れ、言葉の背景にある概念を世界中に広め始めた。

マータイいわく、消費削減、再使用、再生利用、そして自然への尊敬が全部込められている言葉はほかに見つからないから、「MOTTAINAI」を運動のキーワードとして選んだ。このことで、日本の伝統的価値観が国際舞台でどれだけ輝いたことか。

人を褒めたたえてくれる人もいれば、バッシングしてくる人もいる。いま活躍中のトゥーンベリは後者。彼女は9月にイタリアで開催された「若者気候サミット」で、大国の気候危機に対する取り組みを題材に演説をした。

例えば「グリーンエコノミー、うんたらかんたら」と彼女は演説で言った。これはボリス・ジョンソン英首相の風刺。そして、「ビルド・バック・ベター、うんたらかんたら」。これはジョー・バイデン米大統領をばかにしているくだり。彼女はこうして各国の対策を、実態のない口先だけのものとして批判しているわけだ。

でも、おかしい。日本の環境政策への言及がない。

批判を免れているのだからちょうどいいと思うかもしれないが、トゥーンベリは決して人を称賛しないタイプであることを忘れてはならない。無視イコール批判されない、ではない。

2011年に亡くなったマータイの「MOTTAINAI運動」は今も続いているが、18歳と若いトゥーンベリはこれを知らないのかもしれない。だったら、エネルギーの地産地消を推奨する「EIMY(エイミー)」はどうか。

これは東北大学名誉教授の工学者、新妻弘明氏が2002年に提唱したもので、地域にある再生可能エネルギーを利用するという考え方だ。

場所の特徴に応じて、主要なエネルギー源は地熱、水力、太陽光、バイオマス、あるいは風力になる。例えば、温泉の出る地域では地熱。軽井沢のあるリゾートホテルは、化石燃料を一切使わずに、使用するエネルギーの約70%を自給自足しているという。

2011年に東日本大震災が発生したことでさらにこの潮流に火が付き、長野県、岩手県、宮城県、福島県などで部分的に実施されてきた。このようなシステムが構築されていれば、いざ大規模災害の際、遠方からのライフラインが断たれても、ある程度のエネルギーを確保できるという利点もある。

名前もキャッチー。EIMYは「energy in my yard(私の庭からエネルギーを)」の略だ。

今のところ海外ではあまり知られていないようだが、このネーミングなら違和感なく理解され、受け入れられそう。他国のみんなはまだ知らないだけ。

パリ協定では、世界の平均気温上昇をできれば産業革命前の1.5度に抑えるという目標を掲げている。この目標達成に向けた多くの国の動きは鈍いが、日本はかなり成果を上げているらしい。

少なくとも米気候問題担当大統領特使のジョン・ケリーは第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けた発言でそう評価している。

「もったいない」の次は「EIMY」を世界に広めよう。称賛してもらえるなら、それに越したことはない。

でも、トゥーンベリのような鋭舌活動家が「EIMY、うんたらかんたら」と言ってからかってきても、喜ぼう。厄介なのは日本バッシングよりも「日本パッシング(素通り)」だから。

トニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動。コミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)の主人公。


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