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「お金」や「時間」など、ここが選ぶ際の決め手だ

最近の気に掛かる記事:東洋経済オンライン 井戸 美枝 : CFP®、社会保険労務士

親の介護が必要になった場合や、親だけで自立して暮らすのが難しくなった場合、自宅で介護サービスを利用するか、介護施設に入居するかという2つの選択肢があります。

自宅で受けられる介護サービスはどのような内容か、あるいは、どのような介護施設があるのか、ご存じでしょうか。親や介護する家族の意向に沿って、知っておくべきポイントを解説します。

自宅介護では介護保険サービスを組み合わせる

親の介護が必要になった場合や、生活に支援を要するようになった際、慎重に考えたいのが、居宅(自宅)介護か、施設介護か、です。

居宅介護は住み慣れた家で過ごすことができるため、介護される本人が希望するケースも少なくありません。家族の負担は重くなりがちですが、公的介護保険のサービスを利用することで、介護者の負担を軽減することもできます。

例えば、介護保険制度の地域密着型サービスに「小規模多機能型居宅介護」があります。デイサービス中心に、状況と要望に応じショートステイとホームヘルプを組み合わせて利用するもので、自己負担は所得などに応じて定額料金の1〜3割です(別途、宿泊費や食費がかかります)。

認知症の症状がある要介護度2のAさんは、平日週5日デイサービスに通うプランを立てました。1カ月の利用料(1割負担)は、昼、夕食代やその他の加算を含めて、月額で約5万7000円です。同居する家族が出張などの際には、1日約4000円でショートステイを利用しています。

もう1つ知っておきたいのが、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」です。1回15分程度の訪問介護を1日に3〜4回受けられるほか、緊急時の連絡用にケアコールが貸与されます。具合が悪くなったときや、室内で転倒した際などにケアコールで呼び出すと、24時間対応で介護事業所につながり、看護師やヘルパー、ケアマネジャーが対応してくれます。医師の指示のもと、訪問看護を受けることもできます。

Bさんは要介護2の妻を介護していましたが、自身も要介護1になり、週2回はデイサービス、週5日は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を利用することにしました。週5日、1日3回、1回につき2人分、30分で食事の世話に来てもらいます。費用は2人で月額約4万円です。

費用が抑えられる「特養」や「老健」での介護

要介護度が重くなると居宅介護の負担が重くなることから、施設介護を選択するケースが多くなります。高齢者向けの施設にはさまざまな種類がありますから、施設の種類やそれぞれの特徴、費用、近隣にあるかどうかなど、情報を集めておきたいところです。要介護度によって、利用できる施設の選択肢が異なることも知っておきましょう。

介護保険施設として代表的なのは、「特別養護老人ホーム(特養)」と「老人保健施設(老健)」です。

特養は、つねに介護が必要で、自宅では介護ができない人を対象としており、申し込みができるのは、原則として要介護3以上の人です。東京都区部にある施設の例では、要介護5の人がユニット型個室を1カ月利用した場合の費用は、食費や日常生活費(約1万円)を含めて約14万円です。

費用が抑えられていることなどもあり、地域によっては入居待ちの状態となっています。入居できる順番は申込順ではなく、各自治体の優先入居指針に沿って判断され、独居で要介護度が高い人が優先されます。

老健は、病院に長期入院していた人などが、在宅復帰を目指すための施設です。要介護度1〜5で病状が安定している人が対象で、医学的な管理のもと、介護や看護、リハビリなどが受けられます。在宅復帰を目指すため、滞在できるのは原則的に3〜6カ月ですが、長期間、入居できる施設もあります。また特養に入れるまでの間、老健で過ごすケースもあります。

東京都区部の施設では、要介護5の人がユニット型個室を1カ月利用した場合、食費や日用生活費(約1万円)を含めて14万円などの例があります。

民間施設にもいろいろな種類があります。

まず挙げられるのは、「介護付き有料老人ホーム」です。介護職員または看護職員を要介護者3人につき1人配置、介護職員が24時間常駐、看護職員が日中常駐、協力医療機関を定める、などが義務付けられています。入居一時金を支払って毎月の家賃が抑えられる施設のほか、入居一時金はなしで家賃が高くなる月払い方式、両方を併用する併用方式があります。毎月支払う金額は15万〜50万円程度と、施設によってかなりの差があります。

有料老人ホームの中には、自立した人が入居する住宅型や健康型というタイプもあり、要介護になったら退去になる施設もあります。また有料老人ホーム介護型でも介護保険の指定を受けているかどうか、確認する必要があります。指定を受けていない場合、そのホームでは介護保険は使えません。

「サ高住」は自由な反面、介護サービスがない

要介護度が比較的軽いうちから入居できる施設もあります。

「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)は、高齢者住まい法に基づき、安否確認や生活相談などのサービスが付いたバリアフリーの賃貸住宅です。食事の提供や買い物代行、病院への送迎といったオプションの生活支援サービスも受けられます。サービスの内容は施設によって異なりますので、内容は要チェックです。介護施設のように起床時間や食事の時間などに縛られることなく、マイペースで暮らせるのがメリットです。

ただし、介護サービスの提供はないので、要介護の状態になった場合は居宅支援介護事業者と契約して、ケアマネジャーにプランを作ってもらい、介護保険の居宅サービスを利用することになります。その費用は別途かかるので、思ったより費用がかさむ、といった例もあるようです。また車いすが必要になると退去を迫られるケースもあるので、要介護度が重くなった場合の施設の対応も確認しておく必要があります。食事の提供を受ける場合で、毎月の費用は15万〜30万円程度です(生活支援サービス費含む)。

福祉施設の「ケアハウス(軽費老人ホーム)」は、一般型と介護型(特定施設入居者生活介護)の2つのタイプがあります。一般型は、入居後に介護が必要になったらサ高住と同様、自身で居宅介護サービスを利用します。介護型では、施設に常駐する介護職員から24時間体制で介護サービスが受けられます。施設によっては要介護1〜3までとしているところもあり、要介護が重くなると退去しなければならないケースがあることも知っておきましょう。多くは、看取りにも対応していません。

このほか、大浴場やレクリエーションのエリアなどを充実させたシニアマンションもあります。アクティブなシニアなら快適に過ごせそうですが、介護が必要になったら、介護保険の居宅サービスを利用するか、介護付き有料老人ホームに転居することになります。

親が元気なうちに介護について相談しておく

メットライフ生命の「老後を変える全国47都道府県大調査」(2021年6月、20〜70代の男女に調査)によると、「家族には迷惑をかけたくない」という人が男性では53%、女性では65%にのぼり、「施設に入って介護してもらいたい」は男性35%、女性45%です。「自宅で介護してもらいたい」は男性で10%、女性で9%となっており、施設を希望する人が上回っています。

一方、厚生労働省の調査では、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい」、「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」という人が、施設で介護を受けたい人を上回っています。

個人差もありますから、家族がどんな介護を受けたいか、日頃から話し合っておくことが大切ですが、介護について家族で話し合っている人は全体の13%にすぎず、話し合いをしたことがない人が67%に上ります。60〜70代でも、話し合いをしているのは18%です(メットライフ生命の調査より)。前述のように、要介護度が軽いうちに利用できる施設では、要介護が重くなると退去しなければならないケースもあります。自宅から施設に転居し、さらに別の施設に転居、となると、費用もかさみますから、その点も考慮しておかなければなりません。

自宅で過ごしたい、自宅で過ごさせたい、という気持ちが強い人も多いと思いますが、「家族には迷惑をかけたくない」という人が少なくないことも念頭におき、さまざまな選択肢を検討してみましょう。介護のために子世代が退職する「介護離職」は、できる限り避けたいものです。人生100年時代にはキャリアを築いて、なるべく長く働くことが重要であり、介護離職は子世代の人生に大きな負担になるからです。親が元気なうちに、どんな施設があるかを知る、費用が工面できるかをチェックする、家族で話し合って本人と家族の意向を確認する、ということが重要です。


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