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誤った知識と深すぎる愛情が老後の幸せを奪う

最近の気に掛かる記事:東洋経済オンライン 神戸 利文 : リハビリ専門デイサービスリタポンテ代表 / 上村 理絵 : 理学療法士、リタポンテ執行役員事業部長

「コロナ禍の運動量低下の影響もあり、間違いなく、今後、介護が必要な人が増えていく」と警鐘を鳴らすリハビリ専門デイサービスリタポンテの神戸利文氏と上村理絵氏。しかし、介護に対する意識や情報リテラシーが低いために、間違った介護を受けてしまう、してしまう方も少なくないといいます。そこで今回は、老後を「寝たきり」で過ごさないために、少しでも長く、元気な身体で自分らしく生活できるために、家族も本人も後悔しない介護とは何かについて、両氏の著書『道路を渡れない老人たち』より一部抜粋、再構成し、お届けします。

介護の介入が遅れて地獄を見る人たち

介護で苦労する人、うまくいく人の決定的な差になるポイントが2つあります。

1つは、介護支援による介入が遅れて、身体能力が弱ってしまう人。

もう1つは、医師や介護の専門職による情報提供不足や介護に関する社会的インフラが整っていないなどの理由から、介護による支援を受けていても、支援のやり方などが間違っていて、結局、身体機能の改善が見られず、外出もできないまま、徐々に歩けなくなっていき、寝たきりに近づいていってしまう人です。

まず1つめのポイントから考えてみたいと思います。なぜ、介護による支援が遅れてしまうのか。その大きな原因の1つが、介護を受ける人が、介護というものに対してマイナスのイメージを持っていることが多いことがあげられます。介護と聞いて、お風呂の介助、排泄の処理というイメージしかなく、自分は介護を受けるまで弱っていないと思ってしまう方や身体に不自由を感じていても、自分が弱ったところを見られたくないと考えて拒否する方が多いのです。

しかも、特に男性の介護施設に対するイメージがすごく悪い。歌を歌ったり、折り紙をしたりそういうところをするところというイメージを持っている方が多く「なんで、俺がそんなことをしなくちゃならないんだ」となってしまう。

そのようなことを行っている施設も多いですが、介護保険を使って、身体機能の維持を目的としたリハビリが受けられる施設があるというこがあまり知られていないのです。

いずれにしても、病気や加齢によって身体機能が衰えたときに、結局なにもしないままでいると、どんどんと身体が衰えていってしまい、結果的に家族も本人も苦労してしまいます。

介護は、日常生活に支障をきたしはじめたあたりから受けられるものです。そして、身体機能の維持のためのリハビリは、介護保険を使って受けることができ、なるべくはやくから取り組むことで、効果が出やすくなります。

せっかく介護保険料を払い続けてきたわけですから、使わないともったいない。少しでも生活に不便を感じたら、まず身近にある地域包括支援センターに介護支援が受けられないかどうか、相談することが大切なことではないでしょうか。

「その人のため」の深すぎる愛情が地獄を生む

もう1つのポイントは介護による支援を受けていても、支援のやり方などが間違っていて、結局、身体機能の改善が見られないパターンです。

間違った介護で不幸にならないためには、どうすればいいのか。

1つの重要なポイントは、身体機能を維持させることを第一に考えることです。これがまだまだ介護の専門職の方でも医師の方でも理解いただいている人が少ないのが現状です。

身体機能が衰えて歩けなくなると、外出がなかなか難しくなります。「かむ力が低下」すると、好物も食べられなくなります。身体機能が衰えるということは、それだけ、本人ができることが少なくなります。

やりたいことができなくなっていき、さらには「痛いから」「横になるほうが楽だから」と今までやれていたことをやらなくなり、ついには寝たきりに……。また、外に出られないということは、近所の人たちと話す、友人と会うといった身体機能の維持が、高齢者の幸せの土台になる社会的活動ができなくなります。

会話量の減少は脳への刺激低下を招き、認知症のリスクを高めてしまいます。だからこそ、介護の支援で、身体機能の維持は第一に考えてほしいのです。

そのためには、2つ重要なことがあります。

1つは過剰介護をしないことです。

特に身体を動かす機会が減り、身体が衰えやすい高齢者にとって、箸やスプーンを使って食事をすること、外を歩くこと、トイレをすること、すべての日常動作は、筋力の維持に大切なものなのです。

ですから、家族は「できない」から「手を出す」、「時間がかかる」から「やってしまう」ではなく、できるだけ本人がするという方向で考えてほしいのです。

転倒のリスクがあるから「歩かせない」のではなく、どうしたら転倒のリスクを回避して歩くことができるのかを考える。できない=させないという安易な考えを一度捨てて、本人ができるまで待つ、できるように工夫するという意識を持って、身の回りのことは本人にさせることを考える。本人のできることの幅を狭めないためにも、これはとても大切なことです。また、介護を受ける本人も、介護してくれるからといって甘えたり、面倒くさがったり、はなからできないとあきらめたりしないことです。

自分では何もしないのではなく、できるだけ身の回りのことができるように工夫しながら取り組んでいくことが大切になります。

そして、もう1つは、リハビリ・積極的な機能訓練を行うことです。

高齢になると、数日でも身体を動かさないと、驚くほど身体が弱っていきます。われわれの中では、「入院やショートステイから戻ってきたときは気をつけろ」という暗黙の合い言葉があります。なぜなら、その2つで身体機能がガクッと落ちるからです。1週間以上、病院やショートステイ先で満足に身体を動かさないと、筋力を元に戻すまでには、かなりの時間と根気が必要になってきます。

通常、身体機能を戻すまでに、休んだ日数の1.5~3倍かかるといわれています。

だからこそ、病院やショートステイ先から帰ってきてからが勝負。「退院したばかりだから体調を整えてから身体を動かします」という言葉を、うちのご利用者さまからもよく聞きますが、ここで身体を動かすことを怠ると、身体機能が加速度的に衰えていってしまいます。

病院や慣れないショートステイ先から、久々にわが家に帰ってきたのだからと、のんびりさせてしまうと、取り返しのつかないことになる可能性が高いです。

その1週間+αが原因で、身体機能が衰弱したために、在宅での介護が困難になり、介護保険施設に入所されてしまう方を何人も見てきました。

別に、病院やショートステイに行かなくても、日常から身体を動かさないと、同じように、どんどんと身体機能は衰え、取り返しがつかなくなってしまうのです。

リハビリと聞くと、病気や病気やケガをした人がするものというイメージを抱くかもしれませんが、それは大きな間違いです。リハビリとは、身体的、精神的、社会的に最も適した生活水準を維持するために行う身体訓練のことです。

専門職、施設任せが危ない理由

これらは、介護保険を使って、リハビリをすることを目的としている通所介護施設デイケア(通所リハビリテーション)やわれわれのようなリハビリを専門としているデイサービスなどで受けられます。しかし、介護のプランニングをするケアマネジャーでも、リハビリの重要性を知らない方が多いのです。

さらにいえば、リハビリをやっているといっても、形だけの施設も多くあります。少なくとも1回1時間以上のリハビリ(機能訓練)を行っているところ、PT(理学療法士)などのセラピストがしっかりいるところという2点は押さえておいてください。そのような施設が近くにない場合は、次善の策として、運動系の機能訓練に力を入れていて、外部の医療系(デイケアなど)のPTと連携をしているデイサービスを利用することを考えてもいいでしょう。

もちろんリハビリの重要性を理解してくれているケアマネジャーさんも増えていますが、重要性もわからず、リハビリ専門職の意見を求めるわけでもなく、プランを練り直すのを先延ばしにしたり、リハビリなんて不要と断じたり、専門的な知識がないにもかかわらず「チェックリストで確認してリハビリの必要なしと出た」と言ったり、「わたしのケアプランにケチをつけるのか」と怒ったりする方も少なからずいます。

だからこそ、専門職の人任せにするのは、得策ではありません。ケアマネジャーは、何度変えても構いません。まずは、身体機能の維持を考えているケアマネジャーを選び、適切な介護で、「寝たきり」を防止し、正しい介護によって老後の幸せを手に入れてほしいと切に願います。

『道路を渡れない老人たち リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる』(アスコム)

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