2014年度第2回IIS(国際研究インスティチュート)講演会が2014年5月24日(土)に中央大学駿河台記念館で行われました。
今回は『「チーム・絆・KIZUNA:The Bonds of Emotion」の取り組み ~日本と世界を担う若者へのメッセージ~』というテーマで、日本貿易振興機構(ジェトロ)生活文化・サービス産業部長である眞銅竜日郎氏を講師として迎え、同氏がシカゴ・センター所長であったときの米国中西部での活動や、現在所属しておられる生活文化・サービス産業部の取り組みについて講演して頂きました。
第一部は米国政治経済の動向と中西部の重要性。政治分野では、決断力に欠けるといったオバマ大統領の米国内での評価や、党派対立の激しい米国議会の状況、それによる中道穏健派議員の絶滅の危機、イラク・アフガン戦争での疲弊感で内向き志向が強まっている米国など、様々な問題が取り上げられました。経済動向では明るい話題が多く、失業率・雇用者数の回復、毎年1%の人口増加、多様な市場を作り出す人種構成など、超高額所得層の市場から新興国的市場までバランスよく揃っている中での個人消費が景気回復を下支えているとのことでした。
在米邦人が減っていることから、増加傾向にある在米韓国人の声を重視する州が出てきていることや、TPPを、激化する両党の対立を超えて合意できる成果として重要視していることなども興味深かったです。米国中西部は、米国の中ではハートランド(心のふるさと)と呼ばれる地域だそうで、質実剛健・ものづくりの精神など日本企業が共感しやすい特徴がある地域とのことです。同地域は、日米中西部会という両国・州・県のビジネス関係者や有識者の相互交流・理解促進を図る組織があることなどからも、両国にとって重要な地域であることが窺えました。
第二部『「チーム・絆・KIZUNA:The Bonds of Emotion」の取り組み』では、眞銅氏の米国赴任中の経験談や海外事務所でのチームワークの重要性について、笑いを交えながら話してくださいました。
また、在米中の2011年に起こった東日本大震災に対し、復興支援として「チーム・絆・KIZUNA:The Bonds of Emotion」を立ち上げ、中西部の州政府、商工会議所、日米協会、大学、大学院、ビジネススクールなど様々な場所で「日本・復興・絆セミナー」と題した講演を展開し、正確な日本の情報と前向きなメッセージを伝え続ける活動をされていたそうです。中西部12州すべての知事にも直接会いに行き、日本の重要性を説き続けたとのことでした。その結果、義援金120万ドルの寄贈、アイオワ州知事自ら訪日を明言、米国企業の対日直接投資、日本食の市場開拓など、様々な復興支援が実現できたそうです。第二部の最後では、「日本と世界を担う若者へのメッセージ」として、眞銅氏の熱いメッセージが語られ、身の引き締まる思いでした。なかでも残業修行や他流試合といった言葉が印象的で、これから社会人になる学生や現社会人にも勉強になる部分が沢山あったと思います。
第三部では、日本のクールジャパン戦略とジェトロの事業活動 海外展開支援の取り組みが細かく紹介されました。予定より1時間延長しての講演となり、質問時間も1時間ほど設けられました。クールジャパンの戦略としてあるアニメなどのコンテンツ関連は、身近な分野のためか学生など若い人の質問が目立ち、活発な質疑応答に、まだまだ時間が足りないくらいでした。
書籍やインターネットでは知ることのできない自身の経験を話して頂いたことで、これまで描いていた米国とは違った、政治・経済、その他、生活している人々の多様性を知ることができました。日本に住んでいると、米国は米国として括りがちですが、日本もそうであるように、ひとつの国の中にも地域性があり、様々な人が暮らしているという当たり前のことに気づかされました。眞銅氏の言葉の一部に、「知恵を出す・唸っても知恵が出なければ汗をかく、誠心誠意を尽くして一生懸命に汗をかき、手柄を相手に差し上げて感謝して頂く」というものがありました。眞銅氏の謙虚さ、熱意、行動力に、自身を改めて振り返った人も多かったのではないかと思います。(文責:事務局:本山春美)