<「日本は治安が良い」と言われるが、その1つの側面は子供が事故で死亡する確率が低いこと。北米からすれば驚愕のこの安全性は、いかにして保たれているのか>
京都の小学校に初めて調査研究の許可をもらいに行ったとき、校長と交わした会話は、今も忘れられない。「子供たちはどうやって登校しているんですか」と私が聞くと、校長は一瞬言葉に詰まってから「歩きです」と答えた。
びっくりした私が「全員?」と畳み掛けると、「ええ」と、今度は校長が少し驚いた様子で答えた。「ほかにどうやって学校に来るんですか。みんな歩きですよ」
この校長にとって、子供が歩いて学校に来るのは当たり前のことだった。でも、アメリカや、筆者の出身地であるカナダでは違う。だから校長の答えに「すごい!」と思ったけれど、すぐに「でも、どうしてそんなことが可能なんだろう」という疑問が頭をもたげてきた。
私の研究から分かったことは、日本が政策的に、子供が歩き回る自由を守ってきたことだ。それは子供の自由だけでなく、ほかにも多くの恩恵をもたらしていることが分かった。
小学生が自分で歩いて登校する光景は北米ではほぼ見られなくなった.