• 政策研究・人材育成のプラットフォーム

 2019年12月、中国の武漢市から始まった新型コロナウィルスが世界を震撼させている。発症地である中国では一旦影響が収まったように見えるがアジアをはじめとする国々からヨーロッパそしてアメリカ本土でも感染者の数がものすごい勢いで増えている。

• そんな中、南アジアにある世界最貧国の一つネパールで新型コロナウィルス対策で行われた全土ロックダウンについて、現地から報告する。
 ネパールで新型コロナウィルスの第一感染者が発見されたのは2020年1月末ごろである。彼は中国に留学しており、そこで感染したとみられている。当初ネパールでは新型コロナウィルスの検査機が無かったため香港で検査をして陽性であることが判明した。

• しかし、政府はこのことを簡単に考えその後の対策を一切講じなかった。そして、それから2か月を過ぎた頃新型コロナウィルスの感染者が世界中に増え、インドでも多数の感染者が発見され、ついにインド政府がインド全土のロックダウンを決めた。インドと隣接するネパールは、感染が広がるリスクがかなり高いことと、ベルギーからの帰国者からコロナ感染者が発見されたため、2020年3月23日からネパール政府の閣僚会議で全土ロックダウンを決めるに至った。

政府のこの対策については国民の大半が賛成し、政府と共に見えない敵(新型コロナウィルス)と戦う決意をしたのであった。それでも最初の1週間は地域によって少し問題があり警察によって強制逮捕する場面もあったがそれほど大きな問題とはなっていない。

ロックダウン中、無断外出する人を逮捕されている場面。

• 新型コロナウィルスによって直接影響を受けているのは日稼ぎ労働者である。全土ロックダウンによって都市部にいる労働者は仕事が無くなり食べ物すらない状況に陥った。政府からの支援が中々届く様子がなく仕方なく数百キロ離れた地元へ帰ろうとする労働者の行列がニュースに出るようになった。

• 日稼ぎ労働者以外にも様々な分野での影響が大きい、サービス業、観光業への影響が計り知れないほどある。観光業では、ロックダウン前の状況に戻すため少なくとも5年はかかるとの声があがっている。サービス業と観光業から出る失業者は数十万人になるとの見方がある。
• またインドへ出稼ぎに行っている労働者も、インドでのロックダウンによって仕事を失われ帰国しようとする人々が国境付近で待機していると報道があった。

※インドで働くネパール人の数は数百万人いるとのこと。

• 政府の問題意識が低すぎて起きた問題、世界中の政府が新型コロナから自国民をどのように安全、安心をさせられるかの計画および対策をしている最中に、ネパール政府がやっていたのは政党を分離させる条例の強行提出や医療機器購入の多額の横領問題などであった。支援についても同じく政権運営政党のメンバー(党員)に横領が問題になっている。政府の発表では支援金額が大きく報じられるが、実際支援を受け取った人々の手には数キロの米や、ダル(ごはんと一緒に食べるもの)そして油や石鹸などに留まっている。

生活支援が配布されている様子

これによって過半数の議席によって政権運営をしている現首相が政党内外で批判され、新型コロナウィルス対策よりも政治の話題が多くなってきている。
 昨日の閣僚会議によりロックダウン期間がさらに5月18日まで延長されたが、政府ができるのはロックダウンの期間を延長することぐらいだと批判されている状態である。 最初にロックダウンが決められた時は1週間の期間であった。この時の国民の期待は、政府が医療機関を準備し、ロックダウン後の経済活動をどのように進めていくかを計画する期間であると思われていた。しかし、5回(55日間)も延期したロックダウン期間中、政府が計画を進めている様子が見えてこないことから、国民の中ではこのロックダウンが何のために行っているのかが疑問視され始めている。ネパールのロックダウンはインドに従っているだけとの国民世論が強い。
 ロックダウンによって経済へどれぐらいの影響(損失)あったかをまだ見積もっている様子すらないことは更に問題である。ある経済評論家によると、コロナに直接影響を受けている家庭は250万世帯、もしこの数字が正しくなってくればネパールでの貧困層の割合が35%までに上るとの指摘になる。

ネパールでの新型コロナウィルスに関する最新情報を以下にまとめまる。
2020年5月12日時点のデータ。
感染者数:134人
回復(退院者数):33人
死亡者数:0人
検査数(PCR):17821人
検査数(RDT):58546人
隔離施設にいる:12854人

カダカ ランマニ (Khadka Ram Mani)2020年5月12日


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA